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高知県の郷土料理はバリエーション豊かな地勢と変化に富んだ天候に影響を受けています。また、交通の不便さにより外部との交流が限られていたことにも重要です。おいしい食文化を育む多様性と独自性を醸し出す他の地域からの距離感が、高知県にはありました。
高知県は年間日照量も年間降水量も全国トップクラスです。晴れるときはカラっと晴れて降るときはザアっと降る、切り替えがはっきりした空模様が高温多湿な高知県の気候を生み出しています。それに地形も特徴的です。幅広く太平洋に面している一方で県面積の89%を山岳地帯が占めています。いわば陸の孤島です。
高知県の料理といえば、何と言っても海の幸です。特にカツオは高知県の名物そのもの、新鮮でおいしい高知県のカツオは全国的の知名度を誇り、タタキから削り節まで数多くの方法で調理されています。他にもウツボやきびなごなども有名です。さらには豊かな地味に育まれた農作物も郷土料理には欠かせません。そして、他の地域とは異なる料理の気風にも驚かされます。
高知県の郷土料理は旧国名から土佐料理と呼ばれることもあります。それでは土佐の風土が作り上げた郷土料理を一緒に見ていきましょう。
高知県の看板娘ともいえる一番人気の名物料理です。カツオが本来持つ旨味と炙った香りを活かし、ねぎやニンニクなどの薬味を載せて食べます。全国的にはポン酢で食べることが多いですが、高知では塩で食べることもできます。
発祥については諸説あります。もともとは漁師のまかない料理だったというもの、戦国大名の山内一豊が生魚を食べることを禁じたため藁で焼いたというもの、さらには開国後に欧米人が牛ステーキの代わりに焼いて食べたことに端を発するというものまで実に多種多様です。
調理方法に興味のある方は動画をご覧ください。さばいたカツオの表面を炙り、食べやすい大きさに切った後に調味料を手でたたいて馴染ませます。なお、「たたき」という名前の由来はこの手で「たたいて」刷り込ませていたことに由来します。
たたきになるのは、カツオだけじゃありません。高知の名物にはウツボのたたきもあります。海のギャングとも呼ばれる、あの凶暴なウツボです。
つい身構えてしまいそうになりますが、意外になことに味は上品です。柔らかい触感と甘やかな味わいがおいしいです。骨が多く調理が難しいため、世界的にもウツボを食べる文化は珍しいそうです。しかし、高知県の一部の地域にはウツボを食べる文化がありました。それが昭和30年代に高知市の市場に出回るようになると人気が広まり、地域の味として愛されるようになりました。
根強い人気を誇る珍味である塩辛も、高知県ではカツオでも作られています。酒盗と呼ばれ、名物になっています。江戸時代に土佐藩第十二代藩主である山内豊資が酒盗を肴にお酒を飲み、「盗まれるように酒がなくなってしまう」という感激の言葉を残したと伝えられています。さらには、それが名前の由来になっている説まであります。
高知県では名物カツオを酒盗(しおから)にします。1匹のカツオから少数しか取れない内臓を塩漬けにして、さらに1年ほど熟成させると完成します。
ハリハリ鍋はクジラと水菜という対称的な味と食感を楽しめる、関西地方を代表する鍋料理の一つです。クジラの肉が今より身近だったころには庶民的な料理でした。
高知県を取り囲む土佐湾は日本でも有数のクジラの生息地です。そのため高知県では古くからクジラ漁が盛んな地域でした。クジラへの親しみが文化的な背景としてあったため、ハリハリ鍋は高知県の食文化に深く根付くことになりました。
作り方はレシピ動画を参考にしてください。クジラの赤肉に片栗粉を付けた後に湯通しして、氷水にとります。そのあとは鍋汁に他の具と合わせて土鍋で煮込みます。
カツオ節は様々な料理で使われています。日本の食文化に多大な貢献をしていると言えます。高知県のカツオ節は江戸時代から土佐節と呼ばれ、高級品として扱われていました。
重要なタンパク源でありながら保存が難しいカツオを、如何に長期保存するかという試行錯誤の末にカツオ節は生まれました。薪でカツオを燻すという現在も行われている方法でのカツオ節づくりが始まったのは、土佐だったと言われています。その結果、長期保存が可能になり、土佐のカツオ節は大坂や江戸へと輸出されていきました。
江戸ではカツオ節を相撲の番付に見立てたカツオ番付が行われており、土佐のカツオ節が上位を独占していました。
カツオ節を削り方について関心のある方は下記の動画をご覧下さい。まず、表面のカビをふき取ります。それからカンナの調整をした後、頭側を刃に当てて削ります。
サバも高知県の名物です。土佐近海でとれるサバは身が引き締まっています。そんなサバを使い、正月や神事で作られるのがサバの姿寿司です。頭と尾が付いている印象的な見た目の料理です。
高知県にはハレの日を飾る郷土寿司が数多く存在しますが、サバの姿寿司は最も有名な一品です。行事の食事としては、サバはカツオよりも多く使われました。坂本龍馬も好んで食べたと言われています。
作ってみたい方はレシピ動画を参考にしてみてください。〆たサバの身を背開きにして、塩に漬けます。さらに酢に漬けた後、ゆずのしぼり汁を加えた合わせ酢を用いた寿司飯を詰めます。
暖流である黒潮に面している高知県ではきびなごも名物です。特におからを包むのにきびなごを使うきびなごのほうかぶりは有名です。
お寿司のような外見ですが、お米ではなくおからを使っているのが独創的です。愛媛県の宇和島からおからを使った郷土料理が土佐に伝わったのがきびなごのほうかぶりの始まりと考えられています。見た目の可愛らしさとヘルシーさがJALに評価され、国内線ファーストクラスの機内食にも採用されたこともあります。
また、おからがほうかむりをしているように見えるルックスが名前の由来です。
まず下記調理動画を参考にしてきびなごを捌きます。捌き終えたぎびなごを酢で締めます。それから生姜や調味料を混ぜたおからを軽く炒め、きびなごでくるみます。
高知県東端に位置する東洋町はこけら寿司と呼ばれる郷土料理が名物になっています。目にも鮮やかな色彩が印象的な押し寿司です。
家を建てた際の「こけら落とし」として食べられたことにその名が由来するという説があります。近年では家庭で作られる機会も減りましたが、有志による自主販売の実施や地元企業による商品化などの試みもなされています。
こけら寿司を調理するには、まずほぐした焼サバと柚子酢で寿司飯を作ります。その上に人参、薄焼き卵や椎茸などを配します。それを何度も繰り返し、押し寿司を作ります。その作業が「喜びを重ねる」ことにかけられ、お祝いの席などで作られるようになりました。
土佐清水市松尾地区に伝わっているのはつわ寿司です。押し寿司の一種で、香りのあるツワブキの葉を使っていることが特徴です。海苔が手に入りにくい時代において、殺菌作用があると言われるツワブキの葉は重宝されていました。
おしぬきと呼ばれる大きな箱にツワブキの葉を敷き詰め、その上に酢飯や具(干し椎茸、人参等適宜)を幾重にも重ねながら作られます。大きな箱からお寿司を抜き取る行為が「厄が抜けた」と意味が重なるため、縁起が良い料理とされていました。
全国的にも珍しい鍋焼きのラーメンで、発祥地は須崎市です。戦後間もない頃にラーメンを冷めないままで注文先に出前するため鍋に入れて持って行ったのが始まりとされています。
醤油ベースに細麺というあっさり目な組み合わせに対し、鶏肉、卵、ネギという濃厚な具が載せられるのが特徴です。
作り方は下記のレシピ動画で丁寧にまとめられています。まずは鶏がらスープと鶏肉を火にかけて、煮立ったところで醤油ダレを入れます。少し硬めに茹でた麺を加え、最後に卵やネギなどを入れれば完成です。それから本場では漬物が付け合わせとして必ず添えられます。
ぐる、というのは土佐の方言で「仲間」「一緒」などを意味します。大根、人参、サトイモなど様々な野菜が一緒に煮込まれています。
もともとはお供え用であったため波阿弥陀仏(なむあみだぶつ)の6文字になぞらえ、6つの具を使っていました。しかし、いつの間にかその数が増えていき、今に伝わるぐる煮の姿になりました。味付けも具も地域によって千差万別ですが、一般的に冬の料理と考えられています。大量に作り、何度も煮返して食べるのも共通しています。
ぐる煮の調理方法や使用する具材は地域差がありますが、大根、人参、こんにゃく、サトイモ、豆腐等がメインの具材となっています。醤油仕立てや味噌仕立てなど味付けも様々です。
浜アザミは海岸を生息域とするアザミ科の植物です。高知では室戸岬で自然生育しており、地元では香りの良さが人気で天ぷらにするのが好まれます。さらに高知市内の割烹でも早春を感じさせる郷土料理として楽しまれています。
揚げる時間は5分程度です。アオリイカなどと一緒に揚げることもあります。
イタドリは日本各地に自生するタデ科の植物です。高知県では古くからイタドリを食べる文化があり、家庭の食卓によく登場します。ソウルフードと称されるほど高知県民に深く愛されており、特徴のある食感を楽しめる炒め物が人気です。
作り方はレシピ動画をご確認ください。まずはイタドリの灰汁を抜くために適切な大きさに切り、湯を通し、半日から一日水に晒します。準備が整ったら、醤油や砂糖などの調味料と一緒にフライパンで炒めます。
世界中で生産されている生姜ですが、日本では高知県が生産量の6割以上を占めています。特に四万十川中流域に位置する四万十町は身も大きく品質の良い生姜の生産地として有名です。
生姜はアジアの熱帯地域が原産と考えられています。熱帯地域の特徴は温暖な気候と降水量の多さです。そして、高知県の気候は全国有数の日照量と降水量が特徴としており、生姜の故郷と気候に似ています。それに加えて高知県には四万十川の清流が運んでくる豊かな土壌があるため、おいしい生姜が育つとも言われています。赤梅酢、甘酢、蜂蜜などで漬けられて食べられています。
下記のレシピ動画を生姜を適当な形にスライスし、熱湯にくぐらせます。粗熱を取った後に漬け込みます。実際に作ってみたい方は、レシピ動画を参考してください。
では、最後に昔ながらのスイーツを紹介します。きらずもちは高知県中西部の佐川町に伝わる郷土料理です。きらずとはおからの意味です。おからにもち米と砂糖を加え、あんこをくるみます。
佐川町の尾川地区では、正月に豆腐を作る風習がありました。そして、おからは豆腐を作る時に出来る大豆の搾りかす、きらずもちは豆腐と一緒に正月の食卓を彩る郷土料理でした
いかがでしたか。高知県の郷土料理は柔軟な発想が生み出した独自の味わいが特徴です。幕末の志士達が時代の変化に柔軟に対応できたのも、独創的な食文化の影響がひょっとしたらあったのかもしれません。
美味と珍味、歴史のロマン。文化の薫り高い高知県を是非訪れてみてください。