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京都府の郷土料理といえば、美しい懐石料理や精進料理が思い浮かぶでしょう。実際には先人達の食へのこだわりが現在の京都府の郷土料理の礎となっています。
京都府は、北部にしか海がないため、海産物を新鮮なうちに山間まで運び、おいしい状態で食べることに大変苦労したようです。その結果、独自の保存方法で発酵させた食材を使う調理法が出来上がりました。また原種に近い京野菜を無駄なく食材そのものの味を生かした薄味に仕上げることも大きな特徴です。
北西から南東方向に細長い形をしている京都府は、同じ府内でも日本海側気候と瀬戸内海式気候と異なる気候が存在することが大きな特徴です。また、低めの山地が重なり合い、その合間にある盆地の影響で、夏暑くて冬は寒い気候が、京都府特有の郷土料理を生み出しました。
京都府では、塩漬けや白味噌、ぬかに付け込んだ魚の切り身、特に鯖(さば)や鱧(はも)などのがよく使われます。また、京野菜は、お漬物や郷土料理の食材として多く利用されます。保存のために塩分をたくさん使っていることと、素材本来の味を楽しむために薄味で仕上げることが多いでしょう。京都府らしい食材を使った郷土料理や名物グルメを15選ご紹介しましょう。
京都府北部・若狭湾を望む丹後半島の先端に位置する、舟屋で有名な漁師の町、伊根町の名物です。新鮮な鯖が大量に捕れた時に、ぬか床の樽に漬けて保存したのが発祥です。その後、若狭湾で採れた鯖を鯖街道を使って京の都まで運ぶための加工法として定着しました。樽に漬け込む作業を「へしこむ」というので、「へしこ」と呼ばれるようになりました。
ぬかに漬けることで鯖の旨味が凝縮され、ご飯に合います。お茶漬けにするのも人気のおいしい食べ方です。ぬか漬けの鯖は生でも食べられますが、ぬかを少し残したままでじっくりと弱火で丁寧に焼くことで独特の辛さを楽しめるでしょう。また、残っているぬかが苦手な人は、焼く前に水につけておくとよいでしょう。
京都府京都市北区にある上賀茂・西賀茂地域で多く栽培されている賀茂なすは、大型の丸い特徴的な形で夏の京野菜のひとつとして有名です。黒紫色の果皮は柔らかく、薄いのでそのまま食べられます。緻密で弾力のある肉質の実はまるで果物のようだといわれています。また皮が薄いのであまり日持ちがしないため、収穫してすぐに食べることをおすすめします。
新鮮な賀茂なすを半分に切り、油でじっくりと素揚げします。味噌、酒、砂糖、みりんを合わせた甘味噌を塗って食べましょう。濃厚な甘味噌の風味は、賀茂なすの果物のようなみずみずしさと歯ごたえである素材の特徴を生かす調味料としてぴったりの相性。観光客にもおいしいと人気があり、現在では、夏の祇園祭の頃に料亭でも見られる郷土料理です。
京都府北部に面する宮津市の若狭湾でとれた甘鯛を「ぐじ」といいます。京都府の高級食材として有名です。身が柔らかく、ぐじぐししていることが名前の語源だといわれています。鮮度が落ちないうちにすぐに塩水で〆られ、頭を落とし、鱗は運搬中に身が落ちないようにわざと残します。
聖護院かぶらをすりおろし、卵白と混ぜ合わせます。そして丁寧に処理された「ぐじ」とキクラゲ、百合根とを一緒に蒸し上げます。それに、片栗粉やくず粉でとろみをつけた銀餡(ぎんあん)を掛けて食べます。ねっとりした餡がぐじの柔らかい身に絡み、またカブラが寒い冬には冷えた身体を温めくれます。京都府で冬に人気のあるおいしい郷土料理です。
大豆の加工食品である豆乳を加熱した時に出来る膜を竹串などで丁寧にすくい上げた「ゆば」は、本来、精進料理として中国から仏教が伝わる時に一緒に伝わりました。「ゆば」は「姥(うば)」が語源で、黄色く皺がある感じが老婆の皮膚と似ています。大豆から取れる量は豆腐のたった、10分の1のしか取れないことが高級食材と言われる理由でしょう。
料亭では、刺身や吸い物の材料としてよく使われますが、最近では干しゆばが色々な形に加工されて市販されています。豊富な植物性たんぱく質が少量で得られるので、お酒を飲んだ後に京野菜と一緒に薄味の出汁で煮込んでスープとして食べたり、ゆば独特のとろっとした食感が寒い季節はもちろん、暑い時期の暑気払いの健康フードとしても人気があります。
「芋棒」は海老芋と棒鱈を煮こんだ300年以上前から京都府に伝わる郷土料理です。海老芋は、江戸時代に九州地方で栽培されていた唐芋(からいも)を京都に持ち込んで改良されたのが発祥といわれています。真鱈(またら)の干物である棒鱈を何日もかけてゆっくりと戻し、最初に棒鱈を煮て、棒鱈の灰汁が出た煮汁を使って海老芋を煮ると煮崩れを防げます。
海老芋は昔は大変高価だったので、倹約を由とする京都の武士や商家では、お正月や特別な時に作る料理でした。普段は、海老芋の代わりに里芋を使った「芋棒」食べることが多かったようです。今でも丁寧に面取りされた海老芋と水につけて戻された棒鱈は師走の台所に並び、京都の一般家庭のおせち料理の定番です。また、懐石料理や京料理の一品として観光客にも人気があります。
京都府宇治市は世界遺産でもある平等院があり、平安の昔から仏教の中に茶道を取り入れ、お茶と深く関わってきた地域です。江戸時代に伊藤常右衛門が霧の多い宇治周辺の気候を利用してお茶の栽培・販売を始めました。後に宇治茶として有名になります。戦後、5代目の伊藤久三氏が「(株)伊藤久右衛門」を設立しました。
宇治茶の製造販売はもとより、抹茶を使った食品やお菓子をたくさん開発しました。茶そばは、そば粉と小麦粉に宇治抹茶をブレンドし、京都の名産品として有名になりました。現在では、茶そばの食べ方もまるでパスタのように多様化していますが、一口目は汁をつけずにそのまま頂くのがおいしい食べ方のようです。
京都府では山椒の実を醤油・みりんなどで甘辛く煮て保存しておく習慣はあったようです。それを京都の花街にある店の料理人・晴間保雄氏がちりめんじゃこと一緒に炊き合わせてみたのが最初だといわれています。当初は販売はせず、親しい方へのお土産として使われていました。口コミでおいしいとの評判が広まり、販売に踏み切りました。
現在では、ちりめん山椒の御三家として「はれま」「しののめ」「やよい」が有名ですが、京都のお土産の定番となり、今では、料亭や小さな漬物屋まで、たくさんのちりめん山椒が販売されています。これも貴重な海の幸と保存食に適している山椒の香ばしい香りをコラボさせた京都府らしい郷土料理のおばんさいのひとつです。
日本の家庭料理の定番メニユーである「肉じゃが」ですが、その発祥は、海軍に関係が深いとされています。明治34年に海軍の京都府舞鶴基地の司令官として赴任した東郷平八郎は、若い頃に留学先で食べたビーフシチューの味が恋しくなり料理長に命じました。しかし、料理長はビーフシチューを知らなかったため、東郷の話からイメージして、醤油と砂糖を使って作ったのが始まりです。
平成7年に舞鶴市が、町興しとして「肉じゃが発祥の地」「まいづる肉じゃが」を全国的にアピールし、現在では、京都府のご当地グルメとして認知されるようになりました。他所の肉じゃがはジャガイモにメークインを使いますが、まいずる肉じゃがは男爵イモをを使うことが大きな違いです。
京都府長岡京市から京都市西京区には多くの竹林があり、かぐや姫の伝説の土地といわれています。京都の筍は、新鮮であることが素晴らしいとされ、朝堀りの筍は、そのまま刺身のように生で食べると、歯ざわりの良い食感と、ほのかに春の甘さが口の中に広がるでしょう。京都府の筍料理に使われるのは、「白子たけのこ」と呼ばれます。
また毎年5月16日頃、暦の七十二侯の「竹笋生(たけのこしょうず」に採れた筍が一番おいしいといわれ地元の販売所では、この日を選んで朝堀り筍を買いに来る人で賑わっています。また、わかめとの相性が良く煮物にしたり、筍ご飯もおいしい郷土料理です。筍づくしの料亭では、山椒の木の芽和えの小鉢が有名です。
生麩(なまふ)は、小麦粉と水を混ぜ合わせて練ったものから澱粉を洗い流して抽出されるグルテンにもち粉を加えて、その生地を蒸したり茹でたりしたものです。ふわふわとしたお餅やお饅頭のような食感で、京都では、田楽や炊き合わせ、鍋物などによく使われ、精進料理や懐石料理には欠かせない定番の食材です。
生麩にあわ粉を混ぜたあわ麩や、よもぎ粉を混ぜたよもぎ麩、小豆入りの小倉麩は竿状に形作ります。また、もみじ麩や桜麩は綺麗に着色され棒状の飴のように作られ、飾り麩としてお吸い物や懐石料理の小鉢に彩りを添えています。また手毬などを形取った細工麩などはお菓子として使われ、京都府の名物となっています。
京都府の郷土料理としてすっかり有名になった「湯豆腐」は、元々は京都府京都市左京区にある南禅寺の参道近くで振舞われた精進料理が発端だといわれています。昆布だしのみのあっさりした出汁の中に、あまり細かくならない大きさの豆腐を入れて温まったところをつけだれで食べる極めてシンプルでヘルシーな郷土料理です。
つけだれには醤油やポン酢、薬味にはネギ、柚、大根おろしなどが定番です。また、京都で作られた豆腐がおいしい秘密として京都府に流れる地下水は鉄分が少なくまろやかで繊細な味がすることがあげられます。もちろん、京都観光に出掛けて周りの雰囲気と湯豆腐の味を楽しむのも最高ですが、寒い夜などは気軽に自宅で京風湯豆腐にチャレンジしてみることもおすすめします。
卓袱(しっぽく)とは元々、紅白の華やかな布を掛けた中国式の卓袱台(ちゃぶだい)のことを指します。今では紅白のかまぼこやたくさんの具材を使う卓袱料理が有名です。京風卓袱うどんは、カマボコ、筍、椎茸、ゆば、板麩、三つ葉、焼き海苔などを載せたうどんを京風の出汁でいただきます。
また、京風うどんは、小麦粉を塩水で練り上げ、時間を掛けて熟成された麺を使っているため、出汁が絡みやすく、吸いやすい特徴があります。懐石料理のコースに挑戦しなくても、京都のうどん屋で出来立ての卓袱うどんを食べることで京風料理の味に触れることができるでしょう。また最近では家庭で簡単に作れるように、パックになった京風卓袱うどんを手軽に利用できます。
鯖寿司に使われる鯖は、若狭湾から京都の街中までを繫ぐ「鯖街道」を使って多く運ばれて来ました。運ばれて来た塩鯖は、京都市内に住む人にとってはとても貴重な食材で、いかにおいしい状態を長持ちさせるかを考えた結果、肉厚の鯖を昆布で包み込み、すし飯と一緒にまきすで巻いて熟成させる京都府ならではの鯖寿司の作り方が出来上がりました。
お祭りや親戚が集まる時に振舞われる特別な料理のため、調味料の分量や熟成させる時間、包丁さばきやまきすの扱い方まで各家庭のこだわりがあり、嫁いだ先でお姑さんから伝授されるのが習わしです。京都観光の際にも高級料亭や専門店で食べることができますが、京都府では、それぞれの家に伝わる伝統的な郷土料理です。
京都の麺類のイメージは、薄味に仕上げた出汁に身欠けニシンを載せたニシンそばや具沢山のうどんが思い浮かぶでしょう。実は京都はラーメン激戦区でもあり「京都ラーメン」と呼ばれるラーメンは、昆布だしをベースに鶏ガラ、豚骨から出汁を取り、濃いめの醤油で調味されたこってりとして背脂ベースのラーメンです。
1938年に中国浙江省出身の男性が京都駅付近で始めた屋台のラーメンが発祥であるといわれています。現在では、京都府京都市左京区の一乗寺付近に「京都ラーメン」の店舗が多く競合しています。見た目がどす黒く、醤油辛い感じですが、食べてみると意外とあっさりとした味と柔らかい麺に味がよく浸み込んでおいしいと評判です。
京漬物の三大名物は「千枚漬け」「しば漬け」「すぐき漬け」が定番です。「千枚漬け」は元々は「すぐき漬け」と同じく、京都御所の料理人が考案した良質の昆布だけできめ細やかな食感の聖護院かぶらを乳酸菌発酵させたものであったそうです。第二次大戦後、大量の砂糖、酢、調味料が生産されるようになり、現在の酢漬けの千枚漬けが製造されるようになりました。
聖護院かぶらの生産時期が11月~3月頃に限らているので、お土産として購入したい時は、店舗に確認をしたほうがよいでしょう。京都人にとって「千」の数字は「たくさん」「何枚も」「何度も」という意味を表します。樽に漬け込まれる薄く食べやすい厚さに切られた千枚漬けは千枚以上あるかもしれません。
高級料亭で食べる京料理は、高級食材と料理人の技が冴え、美しく、目と舌の両方で楽しめます。しかし、一般家庭で食べられる京都府の郷土料理の作り方はそれほど複雑ではなく、おいしく食べるための準備を丁寧に時間を掛けています。手に入った新鮮な食材をいかに無駄にせず、どうすればおいしく食べられるかを探求し、それに見合った味付け、調理法が確立されました。
ぜひ、レシピを参考に平安京から続く歴史と伝統の京都府の郷土料理にチャレンジしてみましょう。